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メール・マガジン
「FNサービス 問題解決おたすけマン」
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★第035号 ’00−03−10★
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どうして?(2)
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Rational Process を用い、
原因究明の場面で<よく気付く人>になり、また、<簡単には騙されない人>を
演じる秘訣を前号では提供しました、、、と言えばカッコ良いが、それは決して
不可能を可能にするような<芸当>ではありません。 真面目な<人間業>です。
「その問題はなぜ起きたのか?」の思考パターンで解明できる可能性があるのは、
「普通なら、そういうことにはならない」タイプの問題に限られる、と手の内を
明かしたのもそのため。 「うまく行った」実績や、「あるべき姿」の妥当性が
認められる場合でないと、効果は生じにくい、、、。
えー? 何だかムズカシイこと言うじゃないか。
*
じゃ、こんな例で説明しましょうか。
EM法研修の講師として赴いた、特殊鋼線メーカーBM社、S工場でのことです。
新任の工場長さんにご挨拶することになり、そのついでに伺いました。 「今回
の研修、何か特別なご注文は、、?」 すると、待ってましたとばかり、「原因
究明の実務演習で、是非このテーマを取り上げて欲しい」と。 それは
「工場内を自動巡回させている中間製品搬送車の整備状況が、実に宜しくない。
その原因を突き止めたい」でした。 伺うと「着任後、まずそれが目に付いた。
塗装が剥げているくらい当たり前、車輪カバーが外れたままで平気。 ある朝、
全台数広場に整列させ、諸君これ見ろ。 こんなことで、、と叱ったが、全然
コタエないらしい」歯がゆさ。 どうしてああなのか?! と。
一旦退出し、念のため<叱られた側>の受講者たちにも尋ねました。 そして
たちまち分かったのは、たしかに<諸君>は不都合に思ってない、ということ。
「あれ(整備状況)はずっと前からだし、」とか、「別に危険は無いし、」、、、
<整備不良>が<大多数>によって<普通>だと認識されている。 <完全な
整備状態>こそ<あるべき姿>、とは思っていない。 つまり<あるべき姿>
の<妥当性>が認められていないケースだった、のでした。
* *
だから<問題分析>には不適、とは申しません。 多分、有益な結論は得られ
まいが、何せ工場長のご要望。 ま、一応、やってみましょうか。
例によって、ステートメント。 「S工場、自動搬送車整備不良の原因究明」
とでもしますか。 具合が悪くなっている主体は何か、自動搬送車。 それに
起きているまずい現象は何か、整備不良。 うん、ちゃんと書けていますね。
次は、<起きている>こと、<起きていない>こと、2面からの確認でした。
WHAT の<起きている>は「自動搬送車」。 で、類似した車両で<いない>
のは何かな? 類似の、なんか無いよ。 じゃ、そこは空欄で、、、。
「整備不良」は<起きている>
WHAT 。 類似のトラブルで<いない>のは何? ちょっと考えにくいが、たとえば「運休」、「誤動作」、「事故」とか。
<いる>
WHERE は「S工場」。 <いない>のは? あれを使ってるのは、ここだけなんで、、。 あっ、そう。 じゃ、ここも空欄だな。 でも、
搬送車の<どこ>?という見方ではどうですかね? 塗装、板金、外装部品、
、、もう<全体的>ですよ。 <いない>のは無いな。 おや、また空欄。
じゃ、WHEN は? いつからってもんじゃないよ、なあ? あ、S工場の
歴史と共に、だんだんとイタんで来た? わざと壊したわけじゃないぜ。
まさか、中古を買ったんじゃ? とんでもない、初めはピカピカでしたよ。
なら、現状はやはり<かけ離れ>てるんですな。 で、いつ気付きました?
我々としては、結局、<あの(広場に整列させられた)朝>だろうなあ。
つまりM月D日が<いる>ですな、、と、<いない>は「その前日まで」か。
* * *
こういうとらえどころの無い議論、昔はコンニャク問答とか申しましたが、、、
<いる>と<いない>の対比、<いない>が空欄ではもちろん出来ません。
空欄でない「運休」、「誤動作」、「事故」を<いる>の「整備不良」と比べ、
両者の違いは、、、 まあ、<程度の問題>。 因果関係のどこを見るかの話
というか。 残念ながら、<変化>を見いだすには至りませんね。
<変化>はむしろ
WHEN にあるようで。 以前は言われていなかったことが、M月D日以降言われるようになった。 <以前>と比べ、<以降>の特徴は
何か? 工場長さんが違ってますな。 つまり<変化>は、新工場長の着任。
はあ、前工場長は特に指摘されなかった自動搬送車の整備状態であるのに、
新工場長が「改善すべき」のご見解を? ええ、そうなんですよ!
「整備不良に気付き、それを改めるべきだと考える」人が工場長になられた、
これが<変化>であり、この騒ぎの<原因>だ、、と。 じゃ、対策は?
えー、原因を取り除くこと、、、<その人>をいなくすりゃ騒ぎも、、、
だろうけど、そんなことムリ。 新工場長に「考えを変えて、、」とお願い
するのも難しいのに、「いなくなって下さい」なんて、ねえ? ジョークに
しても悪すぎます。 だいたい新工場長自身、自分が<原因>だ、とは夢に
も気付いておられない。 <原因は掴めても、対策できない事例>ですな。
* * * *
となると、考えられる現実的な対応の一つは、新工場長ご提案の、新<ある
べき姿>の実現に挑むこと。 自動搬送車の整備状況が良くないという事実
を皆が認識し、それとの<かけ離れ>を解消する方策を求めましょう、と。
しかしその整備状況にも拘わらず生産業務に何の支障も生じていないという
別の現実もある。 けれどもそれは、正確には「今までのところ、」の限定
付き。 整備状況が良くない方が良い、と敢えて言う人はいないでしょう。
ならいっそ、<良く>しましょうよ、、、と
考えを切り替えれば、ステートメントも変わります。 たとえば「S工場、
自動搬送車整備状況改善策の選定」。 原因究明でなく、意思決定の課題に。
* * * * *
初めは<問題分析>のテーマとして現われましたが、だから必ず最後まで
それで行かなきゃ、とこだわる必要は無い。 どんな取り組み方をしたら、
より大きな効果が現実にもたらされるか、、、がマネジメント思考です。
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●管理職とは問題提起者、
新工場長さんはそれを演じて下さいました。 リーダーシップの形は様々、
そこに人事異動の効果があるのかも知れません。 ともかく今後、S工場
では自動搬送車の「見た目」にも力を入れて行くことになるでしょう。
しかしながら、新<あるべき姿>がどんなものか。 それを(少なくとも今)
知っているのは新工場長。 ですから、ただ「良くない」ではなく、「こう
あるべき、、」という具体的な基準をご指示頂く必要があります。
もちろん<現状>はそれと<かけ離れ>ている。 その<差>の認識を共有
した上でなければ、目標も設定できないし、<達成>もあり得ません。
*
ステートメントの「改善策」とは即ち、その<差>を無くする方法。 そう
焦点を定めれば、たちまち色々な案が浮かんで来てしまう、、が、ちょっと
待った。 いきなり<方法論>、はいわば短絡的決定です。 それもヤル気
の証明、だから悪いことではない、と言いたいけれども、要注意。
どう注意すりゃ? あ、失礼しました。 技法の手順に従えば良いのです。
それだけで、<不注意>は避けられます。 それが技法の功徳。 オサライ
を兼ね、やってみましょ。 ほら、ステートメントの次は
MUST / WANT!
どんな方法になるかは別として、ともかく決め、<それ>を実行した場合、
それによって、どんな効果が生じることが期待されるのか、です。
* *
・1カ月以内に実施できる
・予算X万円
など、数値的に言える項目が
MUST 。 それに対し、WANT は、・早く実施できる
・費用が低廉で済む
など、MUST の言い換えに当たる項目を含め、さらに思い付く限り、
・(車輪カバーなど)外装部品の欠如がなくなる
・塗装、板金など、外観が向上する
・駆動機構の性能も維持しやすい
・電気回路の点検整備も行き届く
・整備記録が管理しやすい
・整備業務の負担が増えない
・作業人員増につながらない エトセトラ。
WANT は願望、その願わしさのレベルは決して一律ではあり得ません。
最も願わしい項目が「10」、以下「9〜1」の間で適切に重み付けします。
* * *
次、それらのような効果をもたらす方法として何があり得るか、考えます。
いくつあっても良いが、
どれも一長一短。 具体的に評価しなくては。
基本的には
MUST が達成できなければアウトですが、あまりにも MUST が細密だと、どんな方法も、MUST のどれかでアウトになってしまいます。
必要以上の「譲れない!」を並べ立てない配慮が必要です。
MUST がクリヤーできたら、次は
WANT をどの程度満たすか、の評価。一つの
WANT に対して、それぞれの方法がそれをどう満たすか、点数で。最もよく満たす方法に
10 点。 それが基準で、他の方法には 9〜1 点。
あと「重み」と「点数」のかけ算、そして方法ごとにそれを積算します。
* * * *
最後の仕上げは、それぞれの方法に伴うマイナス影響の評価。 そして、
それらを克服するための工夫まで。
これで一式おさらい出来ました。
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●EM法のトークの一つですが、
「本当に良い決定を下すには、まず原因究明から」。 対策を工夫する際、
そうしなくてはならない背景を究めずに「あれやろう、これしよう」では
まずい。 それじゃ大きな成果を得ることは出来まい、という意味です。
*
S工場の一件、原因は工場トップの基準の違いでした。 技術系出身の前
工場長は品質や出来高、実質的な成果を重視した人。 一方、新工場長は
珍しくも総務畑出身。 「何ごともキチンと始末」の人、細かく気付く人、
しかも、かつて社員研修の総責任者を務められ、EM法にとっては導入を
決めて下さった恩人でもありました。 「原因究明!」のご要望もEM法
に惚れてのこと、即ち技法を「よく知っている」(つもりの)人ゆえ。
* *
これ、<技法とは、知っていれば必ず使える、ものではない>ことを示す
例、でもありました。 恩人ご希望通りのパターンで、と行かなくて残念
でしたが、要は搬送車の整備状況改善、ということでご容赦頂きました。
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ところであなたも、<知ってはいるが使えない>技法知識、お持ちでは
ありませんか? Rational Process と併用すると活用しやすいですよ。
■竹島元一■
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